<診療の流れ>
歯科医師として働いた後に医学部で学び直しました
変わったのは、診断への思考です
学生時代にも、実習で診療を経験することがあると思います
口腔外科での診療は、通常の歯科診療とは違います
病棟ではわからないことが多く、いつも不安でした
当時は血液検査、胸部レントゲン、心電図などの知識が足りないから不安なのだと考えていました
本当は、
診療における思考が、
一般歯科と口腔外科では違うため不安になっていたのです
自分の治療で患者さんが良くなることはこの上ない喜びです
しかし、治療がうまくいかない時もあります
治療がうまくいかないとき、
診断が間違えていて不適切な治療が選択されているということがあります
診療を行うには、
正しく診断できる能力が必要です
<診療の大原則>
【主訴】→【診断】→【治療】
これが最も伝えたいポイントです
常にこの原則に沿って考えます
臨床問題はもちろん、それ以外でも各知識がどこに相当するかを意識するようにします
【主訴】とは字のごとく「主な訴え」です
歯の痛み、顎の痛み、頬の腫れなど、患者さんは困ったことがあるから受診します
診察を通じて、原因となる病名を探り当てます
これが【診断】です
診断が最も重要です
なぜなら、診断すれば自動的に【治療】は決まるからです
最近では「○○ガイドライン」や「○○の治療指針」といった各診断(病名)に対する治療をまとめた資料がたくさんあります
主訴は患者さんの訴えで、治療は本に書いてあります
歯科医師としてすべきことは、
診断(病名)をつけて、治療を選んで実施することです
診断が出来ないと、治療も出来ません
「診断できないと治療が出来ないから、絶対に診断するぞ!」という意思で患者さんに接しましょう
ちなみに、
【主訴】が「痛み」→【治療】は「鎮痛薬」
【主訴】が「発熱」→【治療】は「抗生剤」
これは、ダメです
たとえ結論(治療)が同じであったとしても、
必ず診断を付けてから治療を選択する癖を付けて下さい
歯科医師として、診断する能力を高めていきましょう
治療について、
国試では最も一般的な治療法さえ知っていれば十分です
例外的なことは臨床現場で身に付けていけば大丈夫です
診療の流れは常に、【主訴】→【診断】→【治療】です。
国試の勉強をするときも、
ただ問題を解くのではなく、
知識を貯めるように考えながら問題を読みましょう
症例問題を実際の診療に沿って考えてみます
症例問題では通常、
年齢・性別、主訴から問題文が始まります
年齢•性別は見落としがちですが大事な情報です
病気の頻度が違うのはもちろんです
加えて、その人をイメージするのに必要な情報です
記憶に残したり、他の人に説明するときには必ず年齢•性別から始めて下さい
⚪︎歳◻︎性が3日前からの顎下部痛で受診
のような表現ならその人をイメージできます
6歳と60歳では疑う病気も違います
ぜひ年齢•性別を気にするようにしましょう
ちなみに治療を選ぶ問題は、
「与えられた情報で診断できるので、治療も選べます」
というメッセージが込められています
すなわち診断と治療の両方がわかりますか?ということを聞かれているのです
実際の診療現場では、真っ白なカルテに診療内容を書いていきます
国家試験で与えられる臨床問題の問題文を自分で書くということです
最初の年齢・性別・主訴は簡単です
次に問診の内容を書きます
患者さんに質問して、その答えを書くわけです
質問が適切に出来なければ、いいカルテが書けません
無意識にやっていることですが、
実は質問するためにいくつかの病名を想像しています
それぞれの病名が正しいか間違っているかをさらに推測するために、いろいろと質問をしているのです
これが「問診」です
ですから、病名が想像できていないと、うまく質問をすることができません
病名を想像していても、その病気がどんな病歴を引き起こすのかを知らないとうまく質問をすることが出来ません
うまく問診をするために、年齢・性別・主訴からいくつかの病名を挙げる能力を身に付けましょう
それぞれの病気を思い浮かべながら
「この病気だとするとこんな症状があるはず」
ということを考えながら問診をします
国試問題を読むときも、
「この病気はこういう年齢・性別の人が、こういう訴えで病院を受診するのか」
「この病気はこういう症状の経過をたどるんだ」
と、
病気のイメージを覚えながら読むようにします
臨床問題は典型的な病歴の症例しか出題されていないので、各疾患の病歴を学ぶには最適です
「○○病ってどんな病気?」
と聞かれて、
△歳ぐらいの○性(性別)が、□ヶ月ぐらい前から△△な症状があって受診する病気
△な症状もあるけど、□な症状はないことが多いよ
というふうに説明できるようになりましょう
問診の次に行うのが身体診察です
思い浮かべた病名が、正しいか間違っているかを考えながら、診察します
「この病気だったら、こんな所見があるはず」
「この病気だったら、こんな所見はないはず」
と考えながら診察します
診察する前に、問診までの内容から「こんなふうになっているんだろうなー」と考えて口を開けてもらったり、頸部を触診したりするわけです
何も考えずに診察をしても、細かい異常に気付きません
ちなみに問診の途中で「この病名に違いない」と思っても、すぐに診察はせずに我慢します
他に可能性がある病名についても質問し、その病気ではなさそうだな、やっぱりさっきの病気のはずだと自分の中の答えをまとめてから診察します
問診して、診察して、また問診して、診察してを繰り返すのは好ましくありません
白紙カルテには問診を記載した後に身体所見を記載するため、問診と身体診察を行ったり来たりするとまとまりのないカルテになってしまいます
最後に、診断の確定的な証拠をつかむために検査を行います
検査は通常、費用や苦痛を伴うため、むやみにたくさん行わないようにします
問診と身体診察から
「この病気Aに違いない。この病気Aを診断するにはこの検査が必要だ」
「でも万が一病気Bだと困るから、病気Bを否定するのにこっちの検査もしておこう」
という考え方で検査をしましょう
レントゲンや心電図を勉強するときに、大事なことがあります
検査だけで診断を付けるようなシチュエーションはありません
年齢も性別もわからない、問診も全くとれない、だけど検査結果だけ手元にあるという状況はありません
レントゲンや心電図を勉強する前に、年齢・性別・問診で病気の候補を想像する練習をした上で、各疾患であればこの検査でこんな結果になるはずという考え方で知識を増やしていきましょう